目が覚めると、まだ辺りは暗かった。
ブラインドの隙間から差し込む光は弱弱しい青色で、まだ少し夜明けには早いようだった。枕元の時計をチラと確認すると、短針は4と5の間に位置していて、秒針は忙しなく音を立てながらその周りを走り続けていた。
悪夢を見ていたわけでもなく、早寝をしたわけでもない。何故だか自然と開いてしまった自分の目を軽くこすりながら、時任は隣で寝息を立てる久保田の顔に目をやった。仰向けに寝ている久保田の首は軽く左側に―つまりは時任の方へ―向いていて、その距離の近さに少し気恥ずかしくなった。四六時中一緒に居る割に、彼の寝顔を眺めるのは久しぶりなような気がする。静かに呼吸を繰り返す彼を見つめているうちに、時任はなんだか妙に落ち着かない気分になった
(……)
高い背丈、広い肩、筋の浮き出た首。端正な顔立ち、太い眉。薄い唇に細い髪。
どれもが、目の前に居る人間を構成している要素であるはずなのに、その全てが結集しても、言いようのない脆さを目の前の男は抱えている…ように見える。
(…なんか、どっか行っちまいそう)
こんな自分らしくない焦燥を感じているのは、きっと今が夜明け前のせいだろう。夜が去りかけているというのに、此処にはまだ陽の光は当たらなくて、靄のかかった不安定なこの時間が、自分の気持ちをかき乱しているのだろう。
そんなふうに自分を納得させて、時任は久保田の方へ体を向けた。ブランケットの中に埋まっている彼の左手を探り当て、そっと自分の左手を乗せる。そして確かめるように、互いの武骨な指を絡めた。久保田の広い肩口に頭を寄せると、その体温にひどく安心した。そうしているうちに再び訪れた優しい麻酔が時任の意識を奪っていく。その心地よい誘いに素直に従って、時任は瞼を閉じた。
「―――ちゃんと、ここに居ろよ、お前…」
彼が小さく呟いた願い事は、消えかけた夜の闇と共に溶け、誰の耳にも残らず消えた。
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眠れなくてぼんやりした頭で、ツイッターに直接書いた覚えがあります
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